何もかもを見直す(スキンケア)

暮らし

三十代後半になると、「何だかしっくりこない」事象が増えた。急いで洗面台に立つ朝、慌ただしさの隙間に感じてきたことである。例えば、いつも生理前かのように何となくメイクが馴染まないような気がするとか、何もなかったはずの頬に細かいシミが出現したりだとか、以前よりも毛穴が気になり始めたり等である。それらはすべて、若干「モヤッ」とする程度の、とても地味で小さな違和感だ。ずっと疲れのせいだと思っていたし、疲れの回復とともになくなると思っていたが、それらは思いのほかどんなに経っても「元通り」になることはなかった。どうやら年齢を重ねてきたことによる変化といえそうだ。それより問題なのは、脳があまりにも疲れていることだった。私はまず、これに取り組まなければならない。累積した疲労を抱えた状態で、常に何かを間に合わせるような日常を惰性で送る間に、私の状況は確実に変化したのだ。

早速だが、洗面台で脳が感じ取る謎の疲労感について挙げていきたい。まず、視界に入る三種類の基礎化粧品だ。二十代の頃からずっと愛用している化粧品メーカーのもので、お得なセット購入で利用していたのだが、冒頭に示したような自身の変化もあり、近頃はあまりしっくりきていない。同時に、その種類・数やテカテカしたパッケージデザインに、視覚的に疲労してしまうような状態だ。更には、洗面台下の在庫が無くなる前に購入するという思考と購入に関わる一切の労力とその算段が、目からの情報により次から次へと芋づる式に連なって、雪崩のように頭の中に押し寄せてくる。また減り具合の異なる複数種類のもののざっくりとした月額コストを割り出せずにいることにも脳が納得できていない。このほかにも、吹き出物ができたときに使用する塗り薬やら、乾燥する時期に使用するオイルやら、雑多で細々としたものが置かれている。これらのものが目に入る度、途方に暮れるような疲労感があるのだ。そして思考も、動作も、とんでもなく重たいデータを読み取り始めるように、フリーズしてしまうのだった。

数や種類が多いことは、疲れる。買い物も、疲れる。そして、ただただ消費することにも、ほとほと疲れてしまった。退職を決断したことは、間違いなく私の人生において大きなターニングポイントになっている。それも、いつの間にか走行していた「年齢的な変化」という名の緩やかなカーブを走行し始めたところで、スピンする直前に棄権した格好だ。すべてを見直す。それはスキンケアにも言えることで、常にベストではありたいけれども、「完璧」という実態のない幻想を追いかけたい訳ではない。今、現実に表現し落とし込みたいと願うのは、もっと楽で心地よく安心できて、心から納得していてしっくりくる、常にゆとりや余白が残されているような、あり方だ。既存の在庫を消化しながら、基礎化粧品の数を減らすことを考えた。できることなら一つにしたい。それが叶う商品を探そう。私はきっと、その商品を好きになるだろう。未来のことなのに、なぜか分かる感覚だった。一つにするなら、オールインワンゲルだ。情報が溢れるインターネットの世界から、気になる商品を見つけていく。そして二年の検証期間で(2021年1月~2023年1月)、三つのオールインワンゲルを試した。その使い心地やコストを検証した結果から、ついに見つけ出したのである。

私が使っていくと決めた商品は、株式会社JES(ジェイイーエス)の『ミネランス ゲルクリーム』だ。このゲルクリームは、匂いがなく、潤うのにべたつかない。さらっとしていて伸びが良く、顔だけでなく体に塗るにも時間が掛からない。たっぷり500g(つまり、0.5kg!)という実用的な量も好ましい。ポンプ式のため、使用時にわざわざ手に取って蓋を取るような作業も発生しない。500gのゲルは詰め替えパウチに入っており、ポンプが付いた専用容器にセットすることで使用できる。セットの方法も斬新で驚いた。詰め替えパウチに専用容器を被せることでポンプの先端が突き刺さる仕組みになっている。詰め替えパウチでありながら、容器の中に流し込むような”詰め替え作業”は発生しないのだ。ゲルが触れるのはポンプの部分だけで、容器や手につくことはない。使い終わりも、ゲルがパウチの中で中途半端に残るようなことはなく、しっかりと最後まで使い切れる。殆ど半透明でシンプルな色合いとデザインの専用容器は、洗面台に置いても視覚的にストレスになることもない。ゲルの使い心地だけでなく、継続的な使用にまつわるあらゆることが心地よいのだ。後から調べたことだが、動物実験も行っていない。一般価格は税込み7480円(専用容器付きだと8800円)だ。予見していた通り、私はこの商品をとても好きになった。夫にも使ってもらったところ、使い心地は良いとのことで、密かに目論んでいたこととして共用にした。その結果、三種類の基礎化粧品と夫の保湿ジェル、更にはボディクリームまでも、わずかこの一種類に集約することができたのである。

計り知れないメリットは、何よりも脳にもたらされた。洗面台の静けさとともに訪れたのは、凪のような脳内環境だ。何もかもがシンプルで、簡単で、脳がラクとしか言いようがない。その余韻は、いつまでも残るようだった。

詰め替え用のパウチに使い始めの日付を油性マジックで書いておくと、どれくらい持つのか知ることができる。三年余り検証してみると、季節によって夫婦二人で約2か月~5か月持つことが分かった。冬は夏に比べて使用量が多い結果だ。こうして、とうとうスキンケアの月額コストを割り出せたことに、脳の霧は晴れるようだった。本当に気に入ったもので生活していく場合、そのコストは一体いくらなのか、漠然と気になっていたのだ。帰省等の際は、トラベル用のクリーム容器にこのゲルクリームを必要量入れていく。吹き出物ができたときは、基本に立ち返り『オロナインH軟膏』を塗ることにした(昔から傷薬として常備しており、結局私にとってはこれが一番効く)。

このゲルクリームに関して正直に書くと、私にとっては冬場に限り保湿力が物足りない。多少の乾燥よりも「これだけでいい」という脳のラクさを優先してきたが、全身が特に乾燥した三年目の冬を機に、JESの食用オーガニックひまわり油『ハイオレックひまわりオイル』を併用することにした。掌でゲルクリームと混ぜたり、ゲルクリームの後に使ったりしているが、サラサラしていて使い心地がよく、保湿力がぐんとアップする。化粧下地としても良い感じだ。そもそも食用オイルなので匂いもなく料理に使用できるのはもちろんなのだが、肌にも使える汎用性の高さが嬉しい。「これ用のこれ」「あれ用のあれ」と、あまりにも細分化した目的に対する用途に限定されると、たくさんの種類を持たなければならなくなってしまい、モノに束縛されるようで、とても息苦しいのだ。スキンケアに使う分は、100円ショップで販売されているポリエチレンの柔らかいオイルボトルに移してゲルクリームのポンプの脇に置いている。基礎化粧品をやっと一種類に集約できたところで、何かを足すことにはあまり気が進まなかったが、ゲルクリームと相性も良く気に入った。それとも脳がラクになった間に、何かを受け入れる余地ができたのだろうか。

新しいことを始めるときにはエネルギーが必要で、それを定着されるには時間が掛かるが、ゲルクリーム+ひまわりオイルの運用は、新しいスキンケアの雛形として生活に馴染んできている。淡く残した余白の中に時間差で訪れたのは、冒頭に書いた”年齢を重ねてきたことによる変化”という地味な割に存在感のあるショックだった。しかし、それも束の間のこと。このショックが降りる場所(余地)ができたことと、それを亡き者にせず見つめることができたことに、安堵している自分がいる。現状の理解とともに、納得は自然とついてきた。頭の中の自分と現実の自分が、同期されていく。そして記憶の残像に残る「あのときの自分」や、視界に入り込む雑多なことに奪われていた意識が、「今現在の自分」に向き始めた。すると、過去とのネガティブな比較からの対処としてではなく、これからどんな風になりたいか、前向きな気持ちでぽつりぽつりと浮かんでくるようになったのだった。

ところで、JESという会社を知った経緯は、好きなブロガーさんがずっと以前からその商品を紹介していたからなのだが(『希望の命水』という、水に薄めて飲むミネラル液がある)、創業者であり前社長の本井秀定さんのことを知るにつれ、単に好きな商品の購入先として以上に、信頼できると感じるようになった。これは、目に見えないことに対してである。本井さんは、業を企てる「企業」ではなく、神聖なもの(社)と出会う(会)「会社」を目指すと言われている。そして会員(顧客)をどう捉えているのか、2011年の東日本大震災において被災されたJESの会員277世帯もの方々に対する「予算も期間も無制限とした」支援にも、十分に感じ取ることができる。そこには”やってる感”のアピールや、打算はない。「今まで会社を支えてくれた会員さんたちが困っている」ことに対して、「この時のためにがんばって会社を続けてきたんだ」と自らの信念に対して妥協しなかった。そして奇跡のようなことが起こる…。

何もかもを見直す過程で、私は一般消費者として商品と出会い、その会社を知るに至る。その商品との出会いもまた「ご縁」なのだと感じるようになった。これまでのご縁には深い感謝とともにお別れをしつつ、これからの自分が望む新たなご縁を結んでいく。『ともに暮らす「石けん」を選ぶ』で書いた通り、私は『シャボン玉せっけん株式会社』という会社が大好きになったわけだが、『株式会社JES』もまた好きになった。そんな会社の「これが本当に好き」としみじみ思える商品が暮らしの中にあることは、何と幸せなことだろうか。かつてのように、ただひたすら消耗しながら消費するようなあり方ではない。大きな安心感と納得感の中で、確かな喜びを感じ、やがて楽しさにも繋がるようなあり方だ。言わば、生活しながら「推し活」しているわけである(つまり月額コストには、推し活代を含むと考えられる)。

大手電機メーカーのサプライチェーンを担う物流会社において、輸出手配や輸出入コンプライアンスの業務に従事してきました。
2019年の退職を機に取り組んだことや深く感じたことをエッセイとして記録するとともに、そのほんの一欠片がどなたかにとって何かのヒントになればと思い、このブログを始めました。こんな物語もあるんだな、と読んでいただけたら嬉しいです。
趣味は、日向ぼっこ・クーピー画・たまに着物で美術館に出掛けることです♪(これらの背景については、追々記事にしていきたいと思っています^^)

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