母の部屋のカーテン化を終えると、いよいよ母のスマートフォンの乗り換え対応だ。『実家のその後のあれこれ(2)』に記述するのを失念していたのだが、母の携帯会社のポイントは、商品を購入することによって既に使用してある。やり方が分からずこれまで一度も使用していなかった母のポイントは、結構残っていたのだ。全体の商品を見て良さそうなものをピックアップした上で母の希望を聞き、「生食用の帆立の貝柱(冷凍)」「しゃぶしゃぶ肉(冷凍)」「炭酸水」に決めて、注文を代行した。それらの品は間もなく届き、母は少しずつ解凍しながら私の帰省中に何度も夕食の一品として出してくれた。特に帆立の貝柱は二~三箱届いたのだったか、両親と私の三人で食べるには十分過ぎるほどで、本当に美味しくいただいた。母は「ポイントがあったところで自分ではどうすることもできないから、ありがたい」と言っていた。七十歳前後の世代で、このような細々したことをインターネットで対応できる人は、一体どれくらいいるのだろうか。帆立と言えば、入社三年目の秋に友人と北海道に旅行した際、大きなカニや帆立等の海鮮セット(冷凍)を現地から実家に発送した。その直後に帰省した私は、そのお土産を両親とともに食べたのだが、殻付きの帆立はバター醤油で網焼きにしたのが、とても美味しかった。田んぼの稲穂は大きく実って首を垂れ、駅の片隅には曼珠沙華が咲いている頃で、その家には初めて飼った猫がいた。当時学生だった弟は「俺がいない時にずるい」と母に言っていたそうだが、こんな時、何故弟はいつもいないのだろうか。その家に住んでいた頃が一番良かったと思っているらしいことを、私はいつだったか母に聞いた。
他社への乗り換え手続き(MNP予約番号の取得)を進めるにあたって、母の隣に座り、スマートフォンの音声をスピーカーにして、適宜教えながら母に操作してもらう。自分が対応してきたことを今度は母が行うためのサポートをする形だ。キャリアの音声ガイダンスに従った操作を経て、オペレーターとの会話となった。解約に向けて一つひとつの質問に母が答えていくのだが、何のことだったか、「ん??」と思ったことがあり、咄嗟に「娘ですが」と言って会話に割り込む形になったところ、オペレーターの方にびっくりされてしまった。それから少しごたごたしてしまい、母は「申し訳ございません」と大げさに謝るので、黙っていた方が良かったかもしれない、と少し後悔した。いずれまたサポートすることになる父のときに活かすことにする。”今後のお得なご案内”等は不要としてもらった。このようなことに慣れていない高齢者がとても一人で対応できるようなことではないと、つくづく思った。
何とかMNP予約番号が取得できると、格安SIM会社に申し込みを行うとともに新しいスマートフォンの購入手続きを行った。『実家のその後のあれこれ(1)』で申し込んだ母のクレジットカードは、ここで使用するために先に手配していたのだ。申し込み先とそのプラン等については『実家のその後のあれこれ(2)』で説明し了解を得ている。母としては、ようやくである。本人確認の審査を経て、いよいよ端末とSIMが届くと、早速セットアップを開始した。Wi-Fiを接続し、LINE、SMS、モバイルウィルス対策、インターネット通販、ネット銀行、格安SIM会社といった、必要なアプリを次々とインストールし設定していく。LINEの引継ぎは問題なくできたが、電話帳の引き継ぎがうまくできずに一件ずつ手入力した記憶がある。LINEについては、母とよく連絡を取り合っている母の友人がそれぞれ家族とのやりとりでLINEを使っているものの、どうすればお互いがLINEでメッセージのやりとりができるようになるのか、以前からそのやり方が分からずにいるとのこと。これも母をサポートする形で、母のLINEのリンクをSMSで母の友人に送り、「友だち追加」する方法をお伝えした。お互いLINEで繋がると、写真も送れるようにもなり便利になったようだ。母には、個人情報の入力や送信には気を付けるよう改めて伝えた。それから、よく利用するお店のLINEアカウントも登録し、お得な案内が受け取れるようにもした。最後に、別途購入したこの機種に合う画面保護シートとケースをセットし、セットアップを完了した。
Wi-Fi接続と格安SIMへの乗り換えが完了したことにより、今後は通信費を大幅に削減しながら家でYouTubeを楽しんで鑑賞することができるようになる。しかも得られたメリットは、それだけではない。今後また別の格安SIM会社に乗り換える必要が出てきたとしても、インターネットの手続きだけで対応が完結できる。これは非常に大きなことで、何か不具合が生じた際も、母が時間を掛けてオペレーターに問い合わせたり、父の車でわざわざ店舗に赴く必要もない。必要に応じて私がサポートすれば良いのだから、コンパクトでとても楽だ。私自身の心の負担が、随分軽くなる。同時に、母にはスクリーンショットを撮る方法と、撮ったその画像を私にLINEで送る方法を覚えてもらった。スマートフォンの操作等で不明なことや問題があったときには、その画面のスクリーンショットを私に送ってもらうことにしたのだ。実際の画面を見れば感覚的に分かることも、画面が見えない状態で、良く分かっていない人による、良く分からない説明で「どうしたらいいの!?」と長時間の電話を強いられるのは、不毛だからだ。格安SIMのデメリットとして、外出時に回線が込み合う時間帯等はインターネットに接続しづらいことは、改めて説明した。そして後日、母の旧キャリアの登録IDは削除し、古い端末はキャリアの店舗に回収に出すべく、初期化しておいた。こうして新しいものを使い始める一方、これまでのものを終わらせていく。
ところで、これまでずっとキャリアのe-mailサービスを利用してきた母だが、そもそもe-mailが何なのか良くわかっておらず、Gmailが何なのか、e-mailアドレスも何なのか、分かっていない。インターネット通販の登録IDがe-mailアドレスだったりすると、更に混乱するようだ。各個人がスマートフォンを持つ現代のインターネット社会においては、Gmailも各種ID/パスワードの管理も必須であり、あらゆるサービスに付いて回る。これらを利用できないと、生きていく上であまりにも不便になってしまう。一通り説明したものの、新しいスマートフォンの環境で実際に使用しながら感覚的に理解していくしかないように思われる。一つひとつを暗記する必要はないが、母自身が分かるようにしておく必要があるため、100円ショップ等で販売されているメッセージカード一枚につき一つ、管理すべき情報を書いておくことにした。何のIDとそのパスワードなのかが分かるように、できるだけ大きく見やすく書いておく。必要時に該当のものを見て確認できるようにしておくのだ。おおよその内容は、以下の通りだ。
【Gmail】eメールアドレス:□□□□@gmail.com パスワード:△△△△
【格安SIM会社●●】ID:○○○○ パスワード:△△△△
【インターネット通販会社●●】ID:○○○○ パスワード:△△△△
【ネット銀行●●】ID:○○○○ パスワード:△△△△
これらのメッセージカードは、まとめて決まった場所にしまっておく。うちの実家の場合は、無印良品のポリエステルパスポートケース(現在は廃盤となっている旧式のもの)に収めた。父と母に色違いで二つ購入したのだ。このようなID・パスワードのほか、普段使わないキャッシュカードや印鑑等の大事なものを入れておく。ここで一元管理するのは、両親が確認しやすいだけでなく、私自身が必要に応じてサポートする際もスムーズに対応できるからだ。もう十年以上前の話になるが、同世代である知人のお母様が亡くなられた際、あまりに突然だったこともあり、銀行の通帳や印鑑等がどこにあるのか分からずに困ったという話を聞いた。そのお母様はまだお若かったので、ご本人はもちろん、ご家族も何も準備ができないまま非常に大変な思いをされたことと思う。しかしこのことは、いずれ私も準備しなければならない重要なこととして、心に残った。必要なものは、常に分かるように整理されている必要がある。当然、このパスポートケースも本人および家族が分かるよう、常に決められた場所に保管しておく。
母はこれまでの人生で、人の生死に直面することが多かったこともあってか、自分の健康保険証や服用している薬を家族が分かるようにしておきたいとも言っていた。万が一、救急車に乗るようなことになった場合、家族が救急隊員に対して、どんな薬を飲んでいるのか等の情報を伝える必要があるからだ。これについても、いずれ対応していきたいと思っている。

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